ひずみばかりの世の中に目をこわばらす
鉢花 分けへだてなく陽をあててやろう
少しモダンな髪型の鏡と話す
墓石も暗い顔する世相の彼岸
まだ自分を捨てきれず ゴミをほかす |
伊藤完吾 |
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小石蹴る まだ鴎鳴く古里がある
夕焼け 溶け出した繰り言一日分
この不条理!と玉ねぎ刻む
青空を視て風の行方に触れる
巨木 年輪を誇る |
いまきいれ尚夫 |
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過去の錨を上げ前向きの余生
ははの忌につもる話もって夫旅立つ
夫の遺影 笑い顔が救い
凛として輝く寒い月
裸木が空に向かって踊っている |
大谷房代 |
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スカートを押さえる手に春を見る
あるじ無くして梅が一輪
あれやこれやとお線香をあげる
悔いながら老いた母を叱る
今さら悔いても もどれない双六 |
大村九華山 |
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光と水の連作 ー夜明けから日没へー
一面の葉れんげ 朝露果てもなし
紙片の頂 朝日の透ける蜘蛛の尻から糸
一滴 湖底にひろがる影の同心円
夕風が立ち 川底 影の蛇が這う
閉じた扉の切子 顔に架かる落日の虹 |
岡田隆 |
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ひとり寝に春の光ゆらぐ
北に向かう水鳥に川面動く
花がまたひとる咲いた 私も生かされて
入道雲湧くごとくに新緑萌え上がる
芽吹かんとする枝の咲き |
岡田利雄 |
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プレッシャーに勝てない人生団塊世代
孤食の祖父に「おいしい」と声がけの孫
冬木も骨と筋肉だけで立つ
晩御飯出来る人が作りボランティア三昧
頼みにされる要約筆記が迷走中 |
門田美和子 |
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つちになるに なんのいさかい
かなしみのほねひっそりはきだす
なんのゆめみる とんぼのめのきらめく
だれもさびしいときめ やすらぐ
生き下手ひらきなおってごくらくとんぼ |
窪田耕二 |
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水軍城址へ春の波ひたひた
驟雨が洗った赤いトマト青いトマト
柿が熟れた一草庵の静けさ
みんな疲れて揺れている夜の電車
火を恋う虫の命はかなく |
熊野伸二 |
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花に遊ぶ
蝶々香りを尋ねて そして花
花の知らせです 携帯 笑顔のマーク
己の身も焦がすかブーケンビリア燃ゆ
からたちの思い出トゲ多く若い春
背筋伸ばして水仙春を待っている |
桑原一朗 |
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風のタクト
カウンターがきいた女の独り言
風になって 沈丁花
一つ傘で濡れて恋人でなく他人でもなく
月動かず 水すいすい行ってしまう |
齋藤実 |
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咳き込んで火花
陽炎と歩く
水飲む猫の雨音
起こされておぼろ
落ちて空見る椿 |
佐伯虎杖 |
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爆音のこない日 カボスの白い花粉
船虫ぞろぞろ 俺の目先をよんでいる
花冷えに重ねる 君の筆色
糸トンボ 今夜はどこで寝るつもり
竹とんぼ夕やけ空を押し上げる |
重富架光 |
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ふるさとを思うには白すぎる水仙
椎の実を拾い過去を歩いてしまう
ばら色の日もあった 廃品をしばる
勲章はなにもないから花の帽子
ひとひらの風を描きたくて コスモス |
重富佐代子 |
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雀こいこい ろっぺい句碑に今年も来ている
みんな ろっぺいさんが大好きで雀も来ている
ろっぺい碑のうしろをドンコ舟が通るので
いつもの垣根に石路の花なら咲いている
はるばる わたしも献酒の柄杓手にする |
下川鳴川 |
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スキップしている幼な子の季節
雪のホワイトデイ神さまの物語
梅のかおり うぐいすをつれてきた
今日はお別れの風 花咲く
風花に松葉まっすぐ |
杉山和子 |
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裸婦像の瞳に灰色の蝶が放たれる
たどらなければ薄くなる私の輪郭
太陽の足跡がある海の街の画廊
梅の香りを添えた傘をたたむ
下駄の音 夏物語を閉じにくる |
高木架京 |
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仏とやらを信じて見たい白椿
越えられぬ山ひとつあり藪椿
月のまどに咳がとまらない
咲きたくて咲きたくてタンポポ
沈黙は奥の手藪椿 |
高橋正治 |
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蝉が鳴く蝉がなく昌慶苑(チャンギョンウオン)の杜
鈴懸の落葉で作った飛行機よく飛んだ
冬ソナのダイヤモンドダストは故郷(コヒヤン)の思い出
この寒さがなつかしい故郷(コヒヤン)に来ている
昔の風景がある故郷(コヒヤン)に佇つ |
高村昌雄 |
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花ミモザ大仰に揺れて無口に
青鷺と見ている夕映え
遠吠え止めばせせらぎの眠り
奔放という寂しさのA面
死神も居る天明の頂に |
立花悟 |
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存在と無
雲と雪との誤植だが雪よりも白い雲
ぼくの好きなもの・こと・ひと知る妻が好き
「存在と無」を枕に昼寝する実存
あれが恋といってよいものかと梅に問う |
田中陽 |
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宝剣岳で 友は 千の風になる(部下遭難編)
ひとり雪面に座る 思い出ばかり
頂きにきて、白山に泣く
手をとって 生かされている厳しい父の手(内観編)
コーヒー牛乳がうれしかった父の生きかた |
谷垣雅之 |
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霧ふかく紅葉は見えたりかくれたり
ひそやかにひかる碑へ初しぐれ(報恩寺山頭火句碑建立)
月のひかり 凛として ひややかにみる
山頭火よ 黙して語らん父のにごり酒
天守閣 めぐる想いは ホホに春風 |
種田美奈子 |
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指先 一つの生 美もありそう
闇に沈み 雷(らい)ひとつ
影 完璧に歩(ほ)はば
今という 風が 男の中で蒼かった
己の記憶の中で笑った |
近木 圭之介 |
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かじかむ手がかじかむ手をつつむ
つめのさきまで寒うて
さびしうて大根おろす
薪風呂あふれ火と水に合掌
白い息の遍路で南無大師遍照金剛 |
戸田勝範 |
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朽ちたベンチに陽がすわる 山の駅
うすい唇に軽くふれ春風の吹く口笛
ブラウスの袖ゆるやかにモネの睡蓮
元気です、葉書飛び出す今年の花火
あたたかき陽だまり石も冬にねむる |
内藤邦生 |
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いくさ知らぬ宰相の謳う英語まじりの美しき日本
ふわりと生きたい 峰の白雲
合わせる掌の皺深く 原爆忌
春を酔うほどに 深き暗闇
泣きじゃくる児の顔に 夕日燦々 |
那須正幹 |
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理屈に嘔吐し 寒月は雲に消されている
欺き欺かれ 八十路の月が寒い
野犬まとわりつく 天の孤愁
満天の星は 天上への穴か
草を噛んで きのうをくやんでいる |
西村謙 |
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桜の花びらが集団で横断歩道渡って行ったよ
クラクション鳴らされながら夕立が走る
あの空の向こうからオレンジ塗るゴッホ
水たまりの大空渡るあめんぼう
虫食いといえども四つ葉のクローバー |
林 木林 |
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春の天井窓からさくら色の風が吹き出す
賞味切れのわたしにも春の口紅を買う
はずまない気持ちを長いブーツに押し込む
バレリーナが描く春の放物線
桜蘭の下で針千本をのむ |
平岡久美子 |
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己が影を長く曳いて単色に戻るピエロ
少しだけ砂をこぼして砂との会話
うつむいて父という字が崩れてゆくベンチ
二人称が一人称になる紅い傘
家族がそろうと会話も綿菓子 |
藤田踏青 |
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山門におわす眼光鋭き阿叫の像(阿弥陀寺)
いつなにがあってもいい自分にしておく
夕陽まみれの勤め人 駅へ駅へと
かきのみたわわにきのかげかきのかげ
やらせ、復党、放言と続き揺らぐ政権 |
藤原よし久 |
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初孫の笑顔の中に母をみる
山、歩けば汗ふるさとを背負ったまま
汗の中に浮かぶふるさとが人が心のささえ
愛しいふるさとは山と川と海と友
生かされてふるさとはいつの間にか母に似て |
松浦正人 |
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椿わたしに伸びている
セピア色の写真の中に母といる
椿をまた見に行こうとメールが届く
雨が走っていく耕した土
ときめきは今にも咲きそうな白椿 |
水間富美子 |
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酔いどれて 馴染みの店で 朝までうたた寝
ようけ飲んで 血を吐くまで飲んで 悔いる休日
入り川へ 酒吐く夜更けは ちんが群れ来る
きのふもけふも 飲み明かして 家を空ける
酔いつぶれて 片足だけ靴 大の字の上がり口 |
森川信夫 |
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水ぬるむ水槽の金魚が鬱を吐く
花芽うながすほどの雨音に居る
塩壺の湿りぐあいも梅雨の底
指先の遠い記憶が鶴を折る
山茶花咲いて少年の歩幅で冬がくる |
山上和子 |
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夕光
みどりしたたるなかに坐す
掌に掌あたたかく夕すげのはな
蒼海に月を浮かべてひとり
ひぐらしかぼそくふるさとの家
ゆきつむかすかにかすかな |
山口穂銘 |
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泣けよと照らす月見ては泣くまい
触ってみたいほどまっ青な空
遠慮なく咲いている春に嫉妬する
もて余す我身を酒に浸す
あたうことならなぞってみたい君の心 |
吉次泰男 |
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人を信じたい空へ貼った昼月の切手
寒さ音にして湖心さす舟
枯れ野の嗅覚火にすると春が匂う
枯れ野蹴りゆく風のひづめに萌えよ大地
声たてるほどにもつれ合って蝶の はる |
渡野辺朴愁 |