自由律俳句クラブ 群妙
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2号
群妙 第2号

クラブ会員の作品 〜群妙2号から〜

春のフェリーを待つ 空の彼方で放哉が笑う
放哉も山頭火も渡った海をわたしも渡る
みんなで贋作を見ている 嘘のない春
汐が満ちれば消える道を夕陽とわたしが歩く
障子あければ海のかわりに暮れてゆく花
荒木勉

両手両足上にあげて眠る猫の暑い夏
ガン告知され笑っている人の心知りたい
言ったことが刻々変わって淋しい一人ぐらし
うすい肩 口をつぐんだ友に何も言えない
超ミニスカート 目が宙を舞う
石竹和歌子

  「昨秋」
剥く手が痛くて 栗の実それぞれ
私が七つ剥いても母は栗の皮の山
渋皮煮に挑戦する妹 案の定失敗
渋皮煮に二回目全身で挑戦成功す
美味しい栗沢山に舌鼓をうつ母と私
伊豆素子

島の灯が星になる海の春寒
燐寸すって真昼の匂いを嗅ぐ
笑えば笑って淋しく虚空へ放つ
鬼女に逢ってみたい無明の闇の中
わが体蝿がもてあそぶ淡きかなしみ
井上泰好

川面に鰯雲 風雪に耐えた石の丸さ
渡って知る 川の深さ流れの速さ
父よ母よ こだまする水平線
星の瞬きを吸い込む
トントントン よろけて己の影踏む
いまきいれ尚夫

なつかしい建物が消える思い出また消える
飛行機雲一直線たったそれだけ
広げた地図ふわり夢
新緑の中おもいきり深呼吸
信号待ち 木陰にそっと入る
内田麻里

身体(からだ)のきしみひとつふえて 誕生日
まっすぐな道 点になるまで母を見送る
本を手に風の通りみちさがす
横書きの便りに縦書き 風鈴がゆらり
遠くで雷夕立の匂いが迫ってくる
江内キヨ子

初盆のローソク消えるまで語りかけている
好きだった畑も気力と重い足
娘の気づかいが残る足のうら
ちがう道もあったかと心さわぐ八月
打ち上げ花火が見えなくなる近代化
大谷房代

水鳥が秋を浮かべている
秋風の色は朱か
日が落ち祭りが鼓動をはじめる
酒に月がさかづきの形で
ふるさとは積み重ねた思い出と風
大村九華山

気づけば沼 鳥の影が過ぎる
人逝きて 声ばかりが残る
夢の中に目覚め 碧落
こんなはずではと立ち止まり かくの如しと歩き出す
当て所なく歩き 行き暮れて彼岸花
岡田隆

銀婚式 久しぶりのスカートでいる
抱きしめてあげたい迷路に佇むあなた
何があったの まっ黒の道がつづく絵
「めっちゃうま」その一言ではりきっている
芋づる 庶民の味からブランド品へ
門田美和子

孤高の人を不動の鷺にみる
生きざまに似て浮草ゆらぎ着く
なあんにも 雲一つない空に吸い込まれ
心の棘までは抜けそうもない指の棘
何を悶々(もんもん)世の中からっ風吹くばかり
金子新吾

けがに病気 人が言う四十四のならび芋
汗だくの盆おどり 順位に冷たい風
正直に枯れる植木に水
恋に恋してダイエット
まだ見ぬ孫は幼稚園の制服
河村紗智子

春を漕いでいるやなぎミモザ
さえずりに引かれ浮橋わたりきる
コツーンと枇杷のたね梅雨あけの朝
ふり返る墓の カラスも鳴かない
冬物を洗って余生の賭にいる
重富 架光

小さなはぎの笑顔と目があう
風鈴つるしてしあわせな風をきく
雷で雨やどり空とにらめっこ
ぐみの甘ずっぱさ少女でいる
小さならせん階段かわいいねじ花
清水ステ

重ねた歳をいとしく写す寒い部屋
大切にした街が心の中に座りこむ
気分のうきしずみにきりっと紅をひく
いらだつ暑さ蚊のおえない手のやりば
うしろ姿あの人に似て立ちどまる
下瀬美保子

新興住宅たちならび孫の凧が上がらない
「六人目の孫よ」と娘はらにふれ
可愛くなったかな またパソコンを開く
「おじいちゃんいる」の電話にこみあげてくるもの
スーパーの賑い 孫かと振り返る
白松いちろう

あるきはじめた靴十二センチ
園児のままごとに苦笑い
ビルの谷間に青田いすわっている
少しなじんだメールあれこれしゃべりだす
なにもかもふる里と結びつくなつかしい名前
新山綽子

シャガールの舞い降りる あさもや湯布院の里
由布岳のふもとに突然若者通り
ハネムーンの土産に タヒチの空と海と
花嫁の心を映す あかねいろの海
熱帯魚と泳ぐゴーガンの日常
杉山和子

行き止まりに挑む 微かに流れる水音
開くはじめた山頭火記念館の重い扉
義母(はは)と別れの夜 月下美人咲き乱れる
紙飛行機 自由自在に夢を飛ぶ
UFOの動き真似るコウモリ 五次元に遊ぶ
高木勝二

ちびくれた下駄は花咲く庵(いおり)まで
だまって丸い月に立つ
砂に消えた夕焼けをあるく
傘のうしろ姿雨にやんでいる
月に水打つ
高橋正治

ビルの陰を選んで歩く
暑い 向日葵もうなだれている
(八月十五日の記憶)
あのラジオを聞いた日も暑かった
萬歳(マンセー)の声が走ったのは暑かった
陽炎にラジオの声もゆれていた
高村昌雄(昌慶)

戻れない橋に振り返る百日紅
男の悲鳴して○が逃げくる
磐座の陰に化粧直しの面面
美しい人で卵の白身は食べない
髪を振って拭ううなじの汗ほのかに
立花さとる

時間がとけだしたグラスの水滴
石ころはこの地球(ほし)のかけら
紙ヒコーキの軽さで ツバメ飛ぶ
コンソメスープの分だけパセリ摘む
夢のかけらをパッチワークにして ひとりの夜
田中里美

ふるさとは思い出ばかりの風のなか
ふるさとの病む伯母のつぶやき バスのひと
少年時代の思い出さがす 炎天の旅
「夏休みの宿題やった」受話器もおどる孫のこえ
色あせたシャツに馴染んで車窓に居る
田中利男

物干しの蜘蛛の労作さけて干す
青大将の前で踊る鶺鴒の親になみだ
今年も暑い八月十五日の重い雲
怖れなく灯せる喜び 六十二年前のあの夜
朝はモズ夜はまつむし愁眉を開く
田中尚代

夢うつつ夢のなかで夢みている
しとしと雨降る かえるが跳ねた
ピカリピカリ闇に浮かぶ生命(いのち)の象徴(しるし)
忘れられたの落書き波が洗う
Iは愛で YOUは友で すれ違う
田中宏司(流転)

創刊号 さすってめくってだきしめた
どしゃぶりなんのその学校帰りがあそんでいる
開くだけの八月にはしない
きゅうりも道も曲がっていてはいけませんか
遠い耳へハガキの出番
田中むつこ

仏めぐりは ためらいながら曼陀羅への道
青き風に酔いこもれびにほだされ今日の歩み終る
嵐とともに去りし師は仏となりて今ここに
背を丸め はげみし杖も笑顔もなつかしき
追いかけてくる赤とんぼ 朝つゆの光の中に消えて
種田美奈子

蕗のとう採らずにゆく
大根に詫びて大役ひきうける
白い青衣(あおざい) 笠よりこぼれる長い黒髪
ホルマリンに浮く奇形の胎児 神の啓示
トンボすいすい 小さな秋つれてきた
坪郷 康(也寸志)

としよりの手をひくとしより
新聞よむ手に木もれ日ゆれる
星はいつものところでかがやいています
捨てずによかった さみしがりやにきく薬
夏の朝 木陰に憩う鯉の群れ
寺内ヤス子

風呂のなかにバッタやチョウも
湯けむり 風にわらう
月のひかり等しく すずむしまつむし私にも
耳鳴りか虫の音か秋月よ
虫の音 闇も酔う
戸田勝範

人間の知恵とはそんなものか原爆というもの
探すものいつもなくて不安だけが置いてある
貧しさ遺伝して表札もないまま
老樹まっすぐでそれからのこと
すぎゆくもの物語となりすぎゆく
富永鳩山

わくわくする縄文土器のかけら
傘が笑い傘が走る
やたら使ってほしくない「美しい」ということば
影も歩く
鎌のような月 浮き世を忘れる
永松志都子

いつも頼みごとばかりの神詣で
返信待っている長〜い一日
風そよとも動かず山の寺だまって歩く
風吹いて大波小波の麦畑
せせらぎに耳かしている昼下り
中村ユキ子

猫の背中にも春
また孫が生まれて顔のしみもふえた
黒い蝶がとまっている だれの墓やら
蝉・蝉・蝉の声 まさに夕立のごとく
ツクツクが宿題の残りをせかせている
那須正幹

闘病果てて若葉は名残り雪のごとし
法王空飛ぶ空飛ぶ本を読みながら
晩年やすべては瞬間すべては光
明日はいかに透明いのしし暴れる空
声は虚空へ地平へ画廊の定点より
夏石番夫

妻十四回忌 噛る乾いた仏飯(ほとけめし)
旅疲れの奧目に時事(じじ)屹(そそ)り立つ
鈴なりの柿の夕陽に撃たれる記憶
独りのむ酎 時事は捨てる
待つものなし ただいまのベルを押す
西村謙

思い出は重荷とも宝とも 時のたくらみ
見つけたよ見つかったよと さがしもの
なにもかも包みこんで 月の雫
あと一歩ふみこめず 草茂る
瞑想する庭守り 石と語る
濱田知子

ふうりんがりんどうにいとでんわ
パセリ こもれびのオムレツにも
海に着いても終わらない水の透明マラソン
ゆうやけがそめるみずのくちびる
ダイダイがだいたい橙
林 木林

炎天下精いっぱい一日花
生きていたかネ 弾む立ち話
トンボ風のリズムで青田の上
懸命の一生 落ちた蝉
緑のジュウタン 風走る
原田喜代子

夕立ちの窓辺は土の香り 胸一杯
くせのある ラベルの文字が父のおもかげ
出口のない私の心が叫んでいる
しがみつき ただ踏みとどまり踏みとどまり
理屈では明けない永い夜
桝田裕子

岩かげに花一輪 凛として
ふるさとを背中に岩山を歩く 頂(いただき)は遠い
にぎやかな孫の一声 じいばあ
すぐそこに母が居る もう十三回忌
山にきた山にきた 空気がうまい山にきた
松浦正人

夕立の雨音 耳に自由律
蟻子(ありこ)手の甲どこまで歩む指先ではじく
五葉の松に虹 雨あがる
陽ざしまぶしく秋が黄金色になってきた
若がえりの薬で娘の同窓会にもぐり込む
三浦ツヤ

    二日酔いと寝たり起きたりの連休に詠んだ句
二日酔いの休日うつろな心 遺す一日
吐きくたびれて何も食べぬ日 わずかに痩せる
夜更かしの朝寝坊 一日が短い 夜がすぐ来る
食べてうたた寝 呑んでうたた寝 読んでうたた寝
ごろごろと ひねもす寝たり起きたり また寝たり
森川信夫

文明に取り残されても人として在りたい
地球の肌の神秘に溶け込んで里人
風の道を開けて侘住い 桔梗一輪
想えば満たされて此処に在ることの恵み
花に遊ばれ風にもてあそばれて誕生日
森重満江

大の字の体を通り抜ける夏の風
暑さにしょぼくれた向日葵の明日を思う
ドビュッシーの音を拾う独りの夜
拍手の花束にして音符に集まる
将来を語る平成の娘たちは宝石箱に住む
渡邉江津子

防府市立図書館 自由律俳句講座 講座生の作品(群妙2号から)

つまれた薪も目をつむる日だまり
わかりあえたのか橋のあちこち
あんなふうに私も 落ち葉の舞
出穂澄江

木漏れ日の赤い野いちご日傘をたたむ
蓮の穴競って顔出すマテ貝
もこもこやって来るもみじの手
伊東ヱツ子

つい痛いところに手がいく
壊れていく母に会う せんない せんない
吹き去って風鈴もどし平常心になる
上山孝子

寝たままにしばらく鳥の声聞く休日
あと三年を無事にと送り出す夫の背中
おいしければおいしいと言う夫(ひと)の傍
川本初栄

くちなしの香り心がいっぱいになった
なつかしい顔に あの頃の春と夏
新緑のしずくに花びらはじけ 出勤する
熊谷登士子

空を仰ぐ 迷いを知らない愛媛あやめ
草木(くさき)の青さに 私も染まる
弾み続けて子供は太陽の子でいる
高橋成子

カラス 雨にうたれ考えているようす
主治医の背にいる研修医 エールを送りたい
病床から笑顔だけの恩返し
中村淑子

ため息も溶けていく ウグイス
あのキンカンにも 棘がある
空をみあげる 空がなぐさめてくれる
橋村美智子