自由律俳句クラブ 群妙
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クラブ会員の作品 〜群妙4号から〜

「嘆くな」と風花に背をおされ東京へ帰る
風花の降りしきる街で同じ風を見ていた
がらんどうの海に向えばがらんどうの二人
見ていた海が違う
淋しさの焔となって東京にいる
荒木勉

いもの子の歓声ビニールプールはちきれそう
干物の様になって猫も暑い
プランター なすもきゅうりも一生懸命
がんばって実ったきゅうりいただいている
倒れた夫 たらいまわしする友よ老いは誰も
石竹和歌子

言えない過去が流燈に火を灯す
朝がそこまで来て曖昧な行き止まり
自分の歳は自分で決め空を閉じた雲
朝にたどりっけない回転木馬の汗
切っても切っても金太郎飴は淋しい
井上泰好

戦火の空を流れる星の一滴
青空へ挑む 蝶の羽ばたき
月にかかる雲の行方を占う
賞味期限過ぎ鴉に叱られる
火星に築くか貝塚の数々を
いまきいれ尚夫

かわいい演奏におもいきり拍手
春を感じる土手一面のつくしんぼ
桜満開しあわせとやら信じて見る
新緑がまばゆい眼帯はずした時みたい
どうしようもない暑さ飲んだだけ汗になる
内田麻里

黄色の長ぐつ水たまりへまっしぐら
まわり道してやさしい道を歩く
椅子に浅くかけて医師の言葉を待つ
雲も動かない猛暑 蝉がせわしく鳴く
母のねじ巻き時計とやさしい道を歩いている
江内キヨ子

夫の遺影にいごこちをたずねてみる
八十路の声が聞こえる
命の尊さ知らない若者の大きな声
これからの余生をプラス思考で過ごしたい
夜の計画が朝の体調でくずれてしまう
大谷房代

汗して今日を耕やす
だまって歩く背に蝉時雨
万灯のひとつひとつに祈り
背伸びしても石段の上まで
蝉しぐれに諸法無我
大村俊雄

−隠居−

称して隠居 「何もしない」を ( いしずえ )
辞して三ヶ月 既にして職場を忘る
( ゼロ ) から ( ゼロ ) へ  台所 ( キッチン ) に立つ潔さ
夢に死者たち 誘われて酒に酔う
手仕事の心地よく 書くべきこともなし
岡田隆

汗かいてもかいても道が見えない
母の部屋テレビの声大きくなり
孫の顔に自分の顔さがしている
哀しいほど薄くなった髪 鏡みない
神様はここにいるよ孫の丸い目
岡部忠則

闇夜に女のうなじと遊ぶ白い鯨
惑星に爪をたてているのら猫の恋歌
空いっぱいの恥骨それは紫陽花のため息
骨抜きになった海鼠と遊ぶ夏休み
オリンピック放送に胡座をかく入道雲
おがわひであき

「バイバイおばあたん」すれちがった子
幼児が餓死した日 足もとにカタクリの花が
想いが言葉となる日を待っている
どうぞの声で食べはじめるタマ
ボランティアがすべて その陰に夫
門田美和子

ふり返れば山頭火の小径の変わらぬせせらぎ
彼をホイトウと呼んだ父も世捨て人
納屋の暗闇に山翁の父の笑みが見え
おまえも酔うて来たのか廃煙突一本
へうへうと筆入れた屏風に会いにいく
金子新吾

夏の雷 雨を待つ人もいて
朝のバス停 時計にして今日をはじめる
蝉が ( あつ ) さを ( あつ ) くしている
出てきたアルバム手が動かない
決めかねてケーキの顔がそれぞれの個性
工藤かおり

音楽とふたり旅

雨雲の合問の青空を口笛で吹いてみる
歌でよみがえり唄ってまた
心の内を五線譜にうつして奏でる
うちこわしうちこわし創り出す五線譜
指から こぼれて行く短調の調べ
桑原一朗

おもいおもいへ 椎の花に降られ
ビワがほんのり色づく オバマ宣言
飲めないコーヒーがうまい 俳句が届く
自由律があるから 夫婦でおれる
せっせと蝶の花粉 俺はひるね
重富架光

みんな染めて紫陽花寺はお祭り
月と歩くまっすぐな道
歩いて気付く花一輪
シートベルトしめ 潮風かおる
虫喰い野菜 三ツ星レストランがなんだ
清水ステ

ゆかた美人です蛍の夜
どっこいしょ 口癖に
探し物は 頭の上の老眼鏡
ほこりくさい夕立 なつかしい青春のにおい
食べるときだけ静かになる同級会
清水三幸

光も影も否定しないで のほほんと
川原ザブザブ日傘も憩う夏色
風鈴ひると夜の音の迷い
北向地蔵に手を合わすわらべうた
枯山水 石ひとつの自重
下瀬美保子

空いっぱいに櫻 手をひろげて
声出せば舞うサクラ 二つ三つ
散り残った櫻で奥の杜
ヴィーナスと目が合う美術館の門
上野は雨 ロダンは考えふかくして
白松いちろう

未開封の君 一年後生き生きと
雨だれたどって落ちてゆく
ダンボールの家の奥 位牌が二つ
膿を出すように帰郷する
しょうがない一人でゆくかペンペン草
新山賢治

おへんろの笠のうえに積乱雲
夏の稲妻 亀裂のむこうに黄泉
驟雨を駆けた十四歳の身軽さ置き忘れ
バタンと蒲団に大の字を描く
歩いたあとには寂寥の ( くぼ )
新山博之

地球に涙が降りすぎる
いつの問にか後期高齢 子は遠く
空気をのんでも 米は 減反 ( げんたん ) 何のこと
柘榴 ( ザクロ ) の笑ふ日 いつかねえ
千の風 さそって下さい赤トンボ
菅道江

桜のアーチに吸い込まれる恋人たちの溜息
湯の街ゆ〜らり、月はおぼろ
なんとなく十人十色 朝のさえずり
かけっこの応援している朝顔の数
おたまじゃくしの波紋は幼き日
杉山和子

金魚掬うており女体匂わせて
風鈴の紐取り替えてこの夏を
夜の色に沈みて梔の花匂う
日を食べてカンナのあつき息
月夜の足音に振り返る
高橋正治

障子の向こう 四角い夕焼けがある
かさりと柿の葉の一枚
蜜柑の花が咲いた 窓開けておく
目覚めて命ある歓び
癌も身のうちと なでている
高村昌雄

めしを食っても汗
雨に打たれる蝣蜉と荼毘を待つ
わかれる朝の母は無口草むしる
背中に爪のあとらしく外湯熱く
満月よと妻の声がはずんでいる
立花さとる

風そよぐ風の行方は風まかせ
雲が流れる 波はあくまでも打ち寄せる
ニヤリと笑う男のサングラス
シュンと川面を渡る翠の薫風
BURN燃え上がるジェラシーの炎
田中宏司(流転)

よいことが包まれていそうな春キャベッ
おやゆびの動き軽く合格メール
歓声が乱反射するプールサイド
平均値の中にいる平穏
追伸に言いたいことを書いている
田中里美

ふるさとの果実 描くまでは食べられない
ふるさとは大樹の陰で立ちどまる
斎場へ亡き人を送る蝉しぐれ
炎天 大樹の風は神の恵み
熱風と涼風で大樹の 内外 ( うちそと )
田中利男

示す句にこどもたち「あったりまえじゃん」
新緑は競い合い山ふくらむ
強がりが前のめり
即答できない人の日常が透ける
右流れの文字が止まらない
田中むつこ

日本の青空

模擬原爆 ( パンプキン ) 喰らったわが町夏まつり
まつりの日爆弾の落ちた横を通る
おおきく息を吸う八月十五日 日本の青空
いまは静かに憲法改悪企む奴らだ
あの夏の日少年のはらわた抜いた 模擬原爆 ( パンプキン )
田中陽

青い山くっきり私を吹きぬける風の波
春霞 確かな声できつつきの鳴く
炎天に いつまでつづくシャベルの音
バッハの夜 山頭火と歩むフルートの音色
茶会はキリリと帯の母つれて行く
種田美奈子

ほうたるは ほうほうの蛍に決める
青虫の喰べ残したキャベツ ザワークラウトに
昭和の塵はらって除草機 田の草をとる
山頭火の異端を咎める勇気のない私
業を背負った山頭火 私を生きさせる
坪郷也寸志

地球にやさしくが厭で鬼面
空あり駐車場にも仏陀
木洩れ日 ( ) む草木塔をおかせて貰おう
○と×化学反応おこして人問
死を想いつつ 午睡 ( ひるね ) 宇宙のほとり
泥澄

めだかが待ってる煮干粉を分け
こたつ出したままの春
時計がボンボン寝返りをうつ
こちらに手を振る見まわり隊と子ども達
十五夜をまあるく寝る
寺内ヤス子

ばあさん薪 背負 ( しょ ) って春風
両手ですくう水のおいしさ
りんごかじって道きいて春
春が通りすぎるまでうたた寝
手紙がこない夕焼小焼
戸田勝範

しばらくは川の流れを横に見る
流れを意識して石ごとりと動く
それからは大きな石もちあげる
信じないでどうする動かない石
石のかたちの凹みを見る
富永鳩山

おだやかに送れますかと 深呼吸
笑みがこぼれて陽ざし暖かくなって
小春日和り布団もひなたぼこ
祭りの灯 ( ) ぼんやりかすんで雨あがる
( ) ( しん ) も赤信号に雪降り続く
中村ユキ子

春、善い人ばかりが先に逝く
すり寄ってくるのは猫だけ
入道雲の足元を歩く
一寸先の暗闇への期待
またあの日がやってきて六十三年の余生(原爆忌を前に)
那須正幹

後ろは薄暗い 季節がめくれる
ぼくたちと言えぬひとり雑踏に消える
子を叱って食う 西瓜が赤い
闇雲から出る手は白い
下弦光る下を左右に別れる
西村謙

あちこちと団扇を置いておく
重ねた歳月 満更でもと受けとめる
早く歩けないこどもゆとりと思えば 百日紅
うれしい便りの絵手紙の色
雨が置いてくれた ( あや ) なす万華鏡
潰田知子

雲ふたつ洗濯物の羽根になれ
あおりんごいろしたカマキリの鎌
後戻りしては未来へ跳ね返され
真夜中のシャボン玉かもしれない地球
死に続けながら生まれ続けている波
林 木林

春だよって体内時計が鳴りだす
健気に生きてあとは神様のいうとおり
菜の花がパスタの上で咲いている
自分流をつらぬき骨密度が足りない
がんばれなんて云ってごめんねくちなしの花
平岡久美子

水仙と潮の香りが心に満ちた日
握りしめて 温かくなった金柑をかじる
同じ病の書の中に希望と絶望がいる
泣かなくなった一歩の次
雲が走る 両手を広げて私も飛びたい
桝田裕子

ロープウェイ桜の花びらを運んでいる
赤ちゃんと桜の花びら写真にする
歩きはじめた靴さくら舞っている
散る桜また来る桜さくら桜
飲む水そのまま汗に一貫目の重さ
松浦正人

まきちらした靴をまたいで私は帰る
家をゆすって「ただいまあ」が帰って来る
「晩ごはんなあに」と三人が聞いて行く
悩んでるそぶりの欲しいあの息子
罪悪感を飲む まっぴるまの苦いビール
松永員弓

( かあ ) さん待っとってじゃけんね」 淋しさ残して
壷にコスモス一輪の夕暮
花咲けば草もいいものだわ自己満足
雲が世界地図描いてる様な午後
眠れぬ夜 星の光を手に
三浦ツヤ

額をくっつけて社説読む 古稀まぢか
懐メロを吹けば かすかに口ずさむ老女
母子殺害現場に合掌 死刑判決日
草取る老女の影すこしななめに
茎が倒れた 娘に玉葱送る時期
三原英教

頑固者 岩陰の残雪
早苗田に農家の灯りが映っている
静かな闘志 著義の花
花棕櫚そして雨ざらしのテーブルと椅子
亡き兄が会いに来たのか 草蛍
三好皓三

渚の貝がら国籍を聞いてみたい
電車の吐き出した客 個々の歩みに流れて
地球の一点を与えられて眠る
深いしわで定年のない手をさする
青田が錆びて月も ( ) れない
森重満江

欠け茶碗に熱々のコーヒーだ 公民館の歴史講座
「金印はここや」とゆずらぬ網繕いの漁師
軍艦旗が三隻 そうか竹島に航くのか
「アラカブだあ」と教授が捧げて走ってくる
※アラカブ=カサゴ

カット主戦で勝って寡黙な医学生
山田剛義

夜道に星が転がっている
壁に囲まれて歩く
誰かの叫び気付かないふりして生きている
深海で息する部屋の中
狼のいない島国に住む
吉本知裕

半そで日和の今日をアップビートで歩く
末孫をひな鳥と呼ぶ手が点字うつ
東山に紅をひく二十歳の頃
プール帰りの子どもたちに太陽もはしゃぐ
残暑をさけて銀杏ひとつ
渡邉江津子

防府市立図書館 自由律俳句講座 講座生の作品(群妙4号から)

古稀つれて蕗のとう
母偲ぶ 蝶も来ている遍路の道
悩みも消えて行く秋空は母の懐
阿部美恵子

満月 どの屋根にも
ぽちゃんと角砂糖のひとりごと
ばいばいばいぽいとついてくる
出穂澄江

朝一番庭の花たちに元気をもらう
食べただけのふんを残して ( にっく ) き青虫
ブランド知らないけど幸せのありか知ってます
川本初栄

許した時に 許される
そんなものよと空がほぐれる
言葉との出逢い 恩がえし
橋村美智子

亡くなった恩師とすれ違ったような
ちひろの曲線描き 娘は昼寝
魚へんに何と書こう 水辺の子らを
山野雅子