「嘆くな」と風花に背をおされ東京へ帰る
風花の降りしきる街で同じ風を見ていた
がらんどうの海に向えばがらんどうの二人
見ていた海が違う
淋しさの焔となって東京にいる |
荒木勉 |
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いもの子の歓声ビニールプールはちきれそう
干物の様になって猫も暑い
プランター なすもきゅうりも一生懸命
がんばって実ったきゅうりいただいている
倒れた夫 たらいまわしする友よ老いは誰も |
石竹和歌子 |
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言えない過去が流燈に火を灯す
朝がそこまで来て曖昧な行き止まり
自分の歳は自分で決め空を閉じた雲
朝にたどりっけない回転木馬の汗
切っても切っても金太郎飴は淋しい |
井上泰好 |
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戦火の空を流れる星の一滴
青空へ挑む 蝶の羽ばたき
月にかかる雲の行方を占う
賞味期限過ぎ鴉に叱られる
火星に築くか貝塚の数々を |
いまきいれ尚夫 |
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かわいい演奏におもいきり拍手
春を感じる土手一面のつくしんぼ
桜満開しあわせとやら信じて見る
新緑がまばゆい眼帯はずした時みたい
どうしようもない暑さ飲んだだけ汗になる |
内田麻里 |
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黄色の長ぐつ水たまりへまっしぐら
まわり道してやさしい道を歩く
椅子に浅くかけて医師の言葉を待つ
雲も動かない猛暑 蝉がせわしく鳴く
母のねじ巻き時計とやさしい道を歩いている |
江内キヨ子 |
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夫の遺影にいごこちをたずねてみる
八十路の声が聞こえる
命の尊さ知らない若者の大きな声
これからの余生をプラス思考で過ごしたい
夜の計画が朝の体調でくずれてしまう |
大谷房代 |
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汗して今日を耕やす
だまって歩く背に蝉時雨
万灯のひとつひとつに祈り
背伸びしても石段の上まで
蝉しぐれに諸法無我 |
大村俊雄 |
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−隠居−
称して隠居 「何もしない」を
礎
に
辞して三ヶ月 既にして職場を忘る
零
から
零
へ
台所
に立つ潔さ
夢に死者たち 誘われて酒に酔う
手仕事の心地よく 書くべきこともなし |
岡田隆 |
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汗かいてもかいても道が見えない
母の部屋テレビの声大きくなり
孫の顔に自分の顔さがしている
哀しいほど薄くなった髪 鏡みない
神様はここにいるよ孫の丸い目 |
岡部忠則 |
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闇夜に女のうなじと遊ぶ白い鯨
惑星に爪をたてているのら猫の恋歌
空いっぱいの恥骨それは紫陽花のため息
骨抜きになった海鼠と遊ぶ夏休み
オリンピック放送に胡座をかく入道雲 |
おがわひであき |
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「バイバイおばあたん」すれちがった子
幼児が餓死した日 足もとにカタクリの花が
想いが言葉となる日を待っている
どうぞの声で食べはじめるタマ
ボランティアがすべて その陰に夫 |
門田美和子 |
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ふり返れば山頭火の小径の変わらぬせせらぎ
彼をホイトウと呼んだ父も世捨て人
納屋の暗闇に山翁の父の笑みが見え
おまえも酔うて来たのか廃煙突一本
へうへうと筆入れた屏風に会いにいく |
金子新吾 |
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夏の雷 雨を待つ人もいて
朝のバス停 時計にして今日をはじめる
蝉が
暑
さを
熱
くしている
出てきたアルバム手が動かない
決めかねてケーキの顔がそれぞれの個性 |
工藤かおり |
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音楽とふたり旅
雨雲の合問の青空を口笛で吹いてみる
歌でよみがえり唄ってまた
心の内を五線譜にうつして奏でる
うちこわしうちこわし創り出す五線譜
指から こぼれて行く短調の調べ |
桑原一朗 |
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おもいおもいへ 椎の花に降られ
ビワがほんのり色づく オバマ宣言
飲めないコーヒーがうまい 俳句が届く
自由律があるから 夫婦でおれる
せっせと蝶の花粉 俺はひるね |
重富架光 |
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みんな染めて紫陽花寺はお祭り
月と歩くまっすぐな道
歩いて気付く花一輪
シートベルトしめ 潮風かおる
虫喰い野菜 三ツ星レストランがなんだ |
清水ステ |
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ゆかた美人です蛍の夜
どっこいしょ 口癖に
探し物は 頭の上の老眼鏡
ほこりくさい夕立 なつかしい青春のにおい
食べるときだけ静かになる同級会 |
清水三幸 |
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光も影も否定しないで のほほんと
川原ザブザブ日傘も憩う夏色
風鈴ひると夜の音の迷い
北向地蔵に手を合わすわらべうた
枯山水 石ひとつの自重 |
下瀬美保子 |
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空いっぱいに櫻 手をひろげて
声出せば舞うサクラ 二つ三つ
散り残った櫻で奥の杜
ヴィーナスと目が合う美術館の門
上野は雨 ロダンは考えふかくして |
白松いちろう |
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未開封の君 一年後生き生きと
雨だれたどって落ちてゆく
ダンボールの家の奥 位牌が二つ
膿を出すように帰郷する
しょうがない一人でゆくかペンペン草 |
新山賢治 |
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おへんろの笠のうえに積乱雲
夏の稲妻 亀裂のむこうに黄泉
驟雨を駆けた十四歳の身軽さ置き忘れ
バタンと蒲団に大の字を描く
歩いたあとには寂寥の
凹
み |
新山博之 |
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地球に涙が降りすぎる
いつの問にか後期高齢 子は遠く
空気をのんでも 米は
減反
何のこと
柘榴
の笑ふ日 いつかねえ
千の風 さそって下さい赤トンボ |
菅道江 |
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桜のアーチに吸い込まれる恋人たちの溜息
湯の街ゆ〜らり、月はおぼろ
なんとなく十人十色 朝のさえずり
かけっこの応援している朝顔の数
おたまじゃくしの波紋は幼き日 |
杉山和子 |
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金魚掬うており女体匂わせて
風鈴の紐取り替えてこの夏を
夜の色に沈みて梔の花匂う
日を食べてカンナのあつき息
月夜の足音に振り返る |
高橋正治 |
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障子の向こう 四角い夕焼けがある
かさりと柿の葉の一枚
蜜柑の花が咲いた 窓開けておく
目覚めて命ある歓び
癌も身のうちと なでている |
高村昌雄 |
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めしを食っても汗
雨に打たれる蝣蜉と荼毘を待つ
わかれる朝の母は無口草むしる
背中に爪のあとらしく外湯熱く
満月よと妻の声がはずんでいる |
立花さとる |
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風そよぐ風の行方は風まかせ
雲が流れる 波はあくまでも打ち寄せる
ニヤリと笑う男のサングラス
シュンと川面を渡る翠の薫風
BURN燃え上がるジェラシーの炎 |
田中宏司(流転) |
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よいことが包まれていそうな春キャベッ
おやゆびの動き軽く合格メール
歓声が乱反射するプールサイド
平均値の中にいる平穏
追伸に言いたいことを書いている |
田中里美 |
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ふるさとの果実 描くまでは食べられない
ふるさとは大樹の陰で立ちどまる
斎場へ亡き人を送る蝉しぐれ
炎天 大樹の風は神の恵み
熱風と涼風で大樹の
内外
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田中利男 |
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示す句にこどもたち「あったりまえじゃん」
新緑は競い合い山ふくらむ
強がりが前のめり
即答できない人の日常が透ける
右流れの文字が止まらない |
田中むつこ |
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日本の青空
模擬原爆
喰らったわが町夏まつり
まつりの日爆弾の落ちた横を通る
おおきく息を吸う八月十五日 日本の青空
いまは静かに憲法改悪企む奴らだ
あの夏の日少年のはらわた抜いた
模擬原爆
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田中陽 |
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青い山くっきり私を吹きぬける風の波
春霞 確かな声できつつきの鳴く
炎天に いつまでつづくシャベルの音
バッハの夜 山頭火と歩むフルートの音色
茶会はキリリと帯の母つれて行く |
種田美奈子 |
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ほうたるは ほうほうの蛍に決める
青虫の喰べ残したキャベツ ザワークラウトに
昭和の塵はらって除草機 田の草をとる
山頭火の異端を咎める勇気のない私
業を背負った山頭火 私を生きさせる |
坪郷也寸志 |
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地球にやさしくが厭で鬼面
空あり駐車場にも仏陀
木洩れ日
笑
む草木塔をおかせて貰おう
○と×化学反応おこして人問
死を想いつつ
午睡
宇宙のほとり |
泥澄 |
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めだかが待ってる煮干粉を分け
こたつ出したままの春
時計がボンボン寝返りをうつ
こちらに手を振る見まわり隊と子ども達
十五夜をまあるく寝る |
寺内ヤス子 |
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ばあさん薪
背負
って春風
両手ですくう水のおいしさ
りんごかじって道きいて春
春が通りすぎるまでうたた寝
手紙がこない夕焼小焼 |
戸田勝範 |
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しばらくは川の流れを横に見る
流れを意識して石ごとりと動く
それからは大きな石もちあげる
信じないでどうする動かない石
石のかたちの凹みを見る |
富永鳩山 |
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おだやかに送れますかと 深呼吸
笑みがこぼれて陽ざし暖かくなって
小春日和り布団もひなたぼこ
祭りの灯
灯
ぼんやりかすんで雨あがる
偽
も
信
も赤信号に雪降り続く |
中村ユキ子 |
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春、善い人ばかりが先に逝く
すり寄ってくるのは猫だけ
入道雲の足元を歩く
一寸先の暗闇への期待
またあの日がやってきて六十三年の余生(原爆忌を前に) |
那須正幹 |
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後ろは薄暗い 季節がめくれる
ぼくたちと言えぬひとり雑踏に消える
子を叱って食う 西瓜が赤い
闇雲から出る手は白い
下弦光る下を左右に別れる |
西村謙 |
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あちこちと団扇を置いておく
重ねた歳月 満更でもと受けとめる
早く歩けないこどもゆとりと思えば 百日紅
うれしい便りの絵手紙の色
雨が置いてくれた
彩
なす万華鏡 |
潰田知子 |
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雲ふたつ洗濯物の羽根になれ
あおりんごいろしたカマキリの鎌
後戻りしては未来へ跳ね返され
真夜中のシャボン玉かもしれない地球
死に続けながら生まれ続けている波 |
林 木林 |
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春だよって体内時計が鳴りだす
健気に生きてあとは神様のいうとおり
菜の花がパスタの上で咲いている
自分流をつらぬき骨密度が足りない
がんばれなんて云ってごめんねくちなしの花 |
平岡久美子 |
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水仙と潮の香りが心に満ちた日
握りしめて 温かくなった金柑をかじる
同じ病の書の中に希望と絶望がいる
泣かなくなった一歩の次
雲が走る 両手を広げて私も飛びたい |
桝田裕子 |
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ロープウェイ桜の花びらを運んでいる
赤ちゃんと桜の花びら写真にする
歩きはじめた靴さくら舞っている
散る桜また来る桜さくら桜
飲む水そのまま汗に一貫目の重さ |
松浦正人 |
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まきちらした靴をまたいで私は帰る
家をゆすって「ただいまあ」が帰って来る
「晩ごはんなあに」と三人が聞いて行く
悩んでるそぶりの欲しいあの息子
罪悪感を飲む まっぴるまの苦いビール |
松永員弓 |
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「
姑
さん待っとってじゃけんね」 淋しさ残して
壷にコスモス一輪の夕暮
花咲けば草もいいものだわ自己満足
雲が世界地図描いてる様な午後
眠れぬ夜 星の光を手に |
三浦ツヤ |
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額をくっつけて社説読む 古稀まぢか
懐メロを吹けば かすかに口ずさむ老女
母子殺害現場に合掌 死刑判決日
草取る老女の影すこしななめに
茎が倒れた 娘に玉葱送る時期 |
三原英教 |
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頑固者 岩陰の残雪
早苗田に農家の灯りが映っている
静かな闘志 著義の花
花棕櫚そして雨ざらしのテーブルと椅子
亡き兄が会いに来たのか 草蛍 |
三好皓三 |
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渚の貝がら国籍を聞いてみたい
電車の吐き出した客 個々の歩みに流れて
地球の一点を与えられて眠る
深いしわで定年のない手をさする
青田が錆びて月も
入
れない |
森重満江 |
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欠け茶碗に熱々のコーヒーだ 公民館の歴史講座
「金印はここや」とゆずらぬ網繕いの漁師
軍艦旗が三隻 そうか竹島に航くのか
「アラカブだあ」と教授が捧げて走ってくる
※アラカブ=カサゴ
カット主戦で勝って寡黙な医学生 |
山田剛義 |
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夜道に星が転がっている
壁に囲まれて歩く
誰かの叫び気付かないふりして生きている
深海で息する部屋の中
狼のいない島国に住む |
吉本知裕 |
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半そで日和の今日をアップビートで歩く
末孫をひな鳥と呼ぶ手が点字うつ
東山に紅をひく二十歳の頃
プール帰りの子どもたちに太陽もはしゃぐ
残暑をさけて銀杏ひとつ |
渡邉江津子 |